第3巻 『身近なチョウ 何を食べてどこにすんでいるのだろう(仮題)』では、チョウの成長過程をオオムラサキで追っていきます。
なぜ、オオムラサキにしたのでしょう。
オオムラサキは、環境省カテゴリーの準絶滅危惧です。「それ程どこにもいるチョウではない・・・」と、お思いの方が大半だと思います。確かに、そうです。しかし、50年前には東京の23区内の子どもたちの標本箱の中心にどかっといたチョウです。もちろん中央区での生息は無理でしたでしょうが・・・。
私は3歳から東京で育ちました。
仕事柄多くの方にお会いしますが、環境関連でお会いする方のほとんどが田舎をお持ちで、東京の50年前には立ち会っておられない。東京は、50年前から街だと思っておられることを聞きます・・・。
しかし、官庁街や銀座の目抜き通り周辺は無理ですが、どの区にも、畑や田んぼや小川がありました。高度成長などで、多くの生き物を失ってきた東京です。
でも東京にも、その自然環境の復元を願い、オオムラサキの生態を見せている公園があります。ここへ何度も登場する荒川区です。昨日で公開終了となりましたが、オオムラサキ園の公開期間中、毎年、1日500人近い方々が訪問しています。また、全国各地には多くのオオムラサキの飼育施設があり、訪問する方も多いので、オオムラサキは、他のチョウよりも身近に生態に接することが多いと思います。
私は図鑑を作る側の人間として、アゲハやモンシロチョウの生態は多くの書籍で紹介されていますが、オオムラサキのように幼虫にツノのあるチョウの成長過程は、専門書に近い本に少し載っている程度なので、幼虫にツノがはえている代表選手として、オオムラサキを描くことにしました。
そして、オオムラサキは国蝶です。ぜひ身近に知っていただきたい種です。なお続けて言えば、オオムラサキが飛ぶ自然の再生は、私たち人間の生存に不可欠です。
未来の子どもたちが緑の無い地球に生まれたら、酸素は何からもらうのでしょう。アマゾンまでが開拓されて矮小化している今、身近に緑を取り戻さなければ、未来の子どもたちの生命は保障されません。
と、そんなわけで、オオムラサキの机上飼育に励んできました。やっとふ化の観察を終え、絵を描き始めています。他の生き物も変態に出会う確立は低いのですが、オオムラサキは年一化の生き物なので、出会えたらそれきりです。手元の個体と、荒川自然公園のオオムラサキ園の個体とを見比べながら、日々24時間観察し通してこれたのは幸いでした。
NPOオオムラサキを荒川の大空に飛ばす会の岡本会長様、みな様、有り難うございました。
これから越冬幼虫にどのように変わっていくのか・・・ オオムラサキ園が閉園しましたから、室内飼育と睨めっこを続け、更に一期一会を噛みしめる日々になります。
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